【記録・感想】NTLive「戦火の馬」
☺ナショナル・シアターライブ「戦火の馬」@TOHO日本橋
この作品の上映は日本で何度か行われてきたが、私は初見。
本当に見て良かった!
最初すぐに心を掴まれ、最後まで穏やかな興奮がずっと持続した。表現には限界がないということを痛烈に感じられる傑作だった。舞台芸術や身体表現に何かしらの思い入れのある人には強くおすすめしたい。
一匹の馬はある少年に大切に育てられるが、戦争の波に巻き込まれてはなればなれに。その後も持ち主との別れと出会いを繰り返す。
戦争の中において完全に人間の被害者でしかなく、中立な立場の”馬”。舞台ではそれがより一層印象的に映った。
舞台の主人公は等身大の馬のパペット。本物そっくりに動く精巧なギミックに目を見張る。何より素晴らしいのは、パペットの馬をまるで生きているかのように動かすパペット使いのテクニック。子馬のときは2人で、成馬になってからは3人で、阿吽の呼吸で手作りの馬に命を吹き込む。これらによって、細かい仕草やダイナミックなジャンプまで完全に再現される。
研究や実践を何回繰り返したのだろうか。頭が下がる。真似しようとしてできるものではない。おそらく今後もずっと唯一無二の作品でありつづけるにちがいない。
他にも、シンプルな劇場ながら、素朴な遊び心と高度な技術を結びつけたアイデアがいくつもあり、そのバランスが非常に良かった。
総じて、素晴らしい観劇体験だった。